ろんせん日記

しがない大学生ろんせんが読んだ本、行った場所をちょくちょく紹介するブログです

パク・ヨンミ『In Order to Live(邦題:生きるための選択)』が私に教えてくれたもの

こんにちは。

 

本日紹介したい本はパク・ヨンミさん著の『In Order to Live』(日本語訳版タイトル『生きるための選択』)です。

 

本屋でこの本を見つけた時、日本語訳があるとは知らず、英語版に手を出してしまいました…。

買った当初はめちゃくちゃ後悔しましたが、今はこの本に出会えたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

 

さて本題

 

Yeonmi Park『In Order to Live:A North Korean Giri’s Journy to Freedom』

◆読了時間(まとめ含む):

1週間程度(普段英語の本を読まないため、少々時間がかかってしまいました)

◆重さ:

自叙伝のためスラスラ読めます。


◆評価(5段階):★★★★☆

『One Young World』での彼女のスピーチを観れば彼女の伝えたいこと、概要は理解できてしまう為

 



彼女の名前を聞いたことがある!という方もいらっしゃるのではないでしょうか、2014年にダブリンにて開かれた若者による国際会議「One Young World」にて彼女の行ったスピーチがインターネット上で一時期とても話題になりました。

 

youtu.be

 

 

僕もこのスピーチを観て彼女を知りました。

自分と同い年であることからとても印象深く残っていた、というのが今回この本を手に取った理由です。

 

三部で構成されており、

一部が13歳で北朝鮮を脱出するまで、二部が中華人民共和国にて人身売買されモンゴルに脱出するまで、そして三部が渡韓してから現在に至るまでです。

  

 

私にとって特に印象的に残ったのが第三部でした。

 

というのも、渡韓後に著者が感じたことは私たちにとっても多くのことを再考させてくれる良いきっかけになったからです。

 

以下に特に印象的だった部分を引用します。(日本語訳は僕が頑張って作ったものです。下手な訳で申しわけありません)

 

自由である、とは

 

モンゴルを経由して韓国へ入国した著者、そこで初めて「自由である」ということを知ります。

  

 But for me the most difficult part of the program was learning to introduce myself in class. Almost nobody knew how to do this, so teachers taught us that the first thing you say is your name, age , and hometown.Then you can tell people about your hobbies, your favorite recording artist or movie star, and finally you can talk about “What you want to be in the future.” When I was called on,  froze.

私にとって一番大変だったのは、クラスで自己紹介をすることだった。ほとんどの生徒も同様に自己紹介のやり方を知らなかったため、教師はまず最初に自分の名前、年齢、そして出身地を言い、そして自分の趣味や好きなミュージシャンや映画スターについて話し、最後に将来自分は何になりたいかを話す、という手順を教えてくれた。しかしいざ自分の番になった時、私は固まってしまった。

 

I had no idea what a “hobby” was. When it was explain that it was something I did that made me happy, I couldn’t conceive of such a thing. My only goal was supposed to be making the regime happy. And why would anyone care about what “I” wanted to be when I grew up?

そもそも趣味とはなんなのかわからなかった。自分をより幸せにするものだ、と説明されてもそのようなものは想像できなかった。政権を喜ばせることだけが私の唯一の夢だとされてきたし、誰も“私”が大きくなったら何になりたいかなんて気にしなかった。

 

 I never knew freedom could be such a cruel and difficult thing. Until now, I had always thought that being free meant being able to wear jeans and watch whatever movies I wanted without worrying about being arrested. Now I realized that I had to think all the time— and it was exhausting.

自由がこんなに残酷で大変なものであるとは思いもよらなかった。自由というのは、逮捕される心配もなくジーンズを穿いたり好きな映画を観ることのできることだと思っていた。しかし今になって、自由であるということは、常に頭を使って考えなければならない、ひどく疲れるものであると知った。

 

 

就職活動をしていた時期には自己分析なんかして

「自分はどうなりたいのか」「目標は、夢は」

と自問自答をよくしたものですが、それは生活の安定した我々だからこそ持ちうる悩みなんですよね。

 

世界にはそんなこと考えもできない若者が大勢いる。

 

「やることがない」

というのも同様。恵まれている証なんですね。

 

 

勉強をすること、読書をすること

渡韓した当初に受けた学力テストの結果、彼女は15歳にもかかわらず算数は小学2年生程度、読み書きはそれ以下の実力でした。

しかし彼女はその後の猛勉強の結果、わずか2年で高校の学歴認定試験に合格し、その後ソウルにある東国大学に入学します。

 

The vocabulary in South Korea was so much richer than the one I had known, and when you have more words to describe the world, you increase your ability to think complex thoughts.

韓国には私が今まで知らなかった語彙が沢山あった。そして世界を表現する言葉や語彙が増えれば、複雑なことを考える能力も向上すると気付いた。

 

 

 I was starting to realize that you can’t really grow and learn unless you have a language to grow within. I could literally feel my brain coming to life, as if new pathway were firing up in places that had been dark and barren. Reading was teaching me what it meant to be alive, to be human.

私の中に育つ言葉がなければ、本当の意味で成長し、学ぶことはできない。暗く無味乾燥した土地に新たな道が開けるように、私の脳は文字通り生命を宿したような感覚を得た。読書が生きていることの意味、そして私が人間であることの意味を教えてくれた。

 

勉強は“いい大学にいくため” ”いい仕事につくため“だけに”やらされる“ものではない。

 

1人の人間としてより豊かに過ごすためのものなんだ。

 

この歳になって今だに勉強中にSNSをみたり、ついついYouTubeを開いてしまったりするのですが、もう少し身を引き締めねば、という思いに駆られます。(一方、そんな集中力のおかげで偶然彼女のスピーチに出会い、この本に出会えたのですから何が必要で何がムダかは分からんものです。)

 

 

自分は“何人”であるのか

一方で彼女は北朝鮮出身、ということで様々な差別を受けてきました。

 

渡韓してすぐ、彼女はパソコンを利用しようと安価でパソコンを使えるPCクラブに入店しようとした時のエピソードです。

As soon as he heard my accent, he knew I was not from South Korea.

” We don’t allow foreigner in this place,” he said.

” Okey, I’m from North Korea, but I’m a South Korea citizen now,” I said, utterly shocked. I could feel tears stinging my eyes.

” No, you’re a foreigner,” he said. “Foreigner are not allowed here!”

I turned and ran down the stairs, and I didn’t stop running until I got back to our apartment. I felt gutted.

私の訛った韓国語を聞き、彼は私が韓国出身ではないと分かったのか、

「外国人は入れないよ」と言ってきた。

私はあまりにもショックで、涙が目を刺すような感覚を覚えた。「私は確かに北朝鮮出身だけど、今は韓国の市民権を取得しています。」

「だめだ。お前は外国人だ。外国人は立ち入り禁止だ」

私は階段を駆け下り、そして自宅のアパートに着くまで走り続けた。心をぐちゃぐちゃにされたような気分だった。

 

また、大学入学後、ソウルの夜景を観て 

 

Sometimes I wondered how there could be so many light in this place when, just thirty-five miles north of here, a whole country was shrouded in darkness.(中略)I would wonder:Where is my place out there? Was I a North Korean or a South Korean? Was I neither?

時折私は、わずか35キロメートル北方には全体が暗闇に覆われた国があるのに、どうしてここには沢山の灯りがあるのか、疑問に思いました。(中略)私の居場所はどこなのか?私は北朝鮮人なのか、韓国人なのか?それともそのどちらでもないのか?

 

北朝鮮では脱北者は「裏切り者」として非難されます。そのため彼女にとって北朝鮮は祖国でありながら帰ることのできない故郷です。

 

彼女たち脱北者や、紛争によって発生した世界中にいる難民の人々も同じ思いを持っているのではないか、と考えさせられます。

 

 

いずれも日本で生まれ、日本で生活をする我々にとって殆どのことが「当たり前だ」と感じてしまうことであると思います。

 

本著を通じて「あたりまえの大切さ」を再認識できた気がします。

 

 

 

ぜひ皆さんもお手にとってご覧ください!

 

In Order to Live: A North Korean Girl's Journey to Freedom

In Order to Live: A North Korean Girl's Journey to Freedom

 

 

 

生きるための選択 ―少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った

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